財政再建をいいながら赤字国債は増えつづけ、年金不安を国費投入で将来世代に付けを回し道路公団
の民営化を形式だけでっち上げ次の日に不採算道路すべてを税金で造ることを決め、政治と金の問題は
手付かずで放置、預金に利息がないゼロ金利状態を前世紀末から引きずったままで、政府を信頼しろと
言えるのか。有権者が最も強く求める政策は、依然経済・景気だ。しかし、緊縮型の来年度予算案から
は、米国などへの好調な輸出に依存する景気を内需主導の本格的な回復軌道に乗せる、政治の強い意志
は全く読み取れない。
国民の関心が高い年金改革では、安定財源確保のための消費税率引き上げという本質的な論議は先送
りされた。参院選を意識し、“痛み”を求めるのを避けたとしか思えないが、まさに政治の責任を放棄
する大衆迎合でしかない。年金だけでなく、地方税財政や道路公団の三大改革の過程では、自民党の族
議員や今やネガティブな意味で与党の中心的な役割をしている公明党への配慮、妥協も随所で見られた。
国民年金の実質切り下げにはイヤに熱心な政治家と厚生労働省だが、国会議員年金との格差には驚く。
お手盛りという言葉を、文字通り実践しつつ、教科書に「修身」を盛り込もうなどと、いったいどうい
う頭で考えるのか?まず、自分たちの国会議員年金の切り下げを行って、次が国民年金だろう。順番が
完全に逆だし、国会議員年金の是正を一刻も早く行ってもらいたいものだ。
議院内閣制の下で、内閣と与党間の調整、協調は大切だ。だが、政策のスピードが求められる時代に
あって、基本は内閣主導だ。何よりも、首相が明確な理念、政策、手法を示す必要がある。首相につき
まとう「説明不足」「丸投げ」批判を払拭(ふつしよく)しなければならないはずなのだが・・・
自衛隊派遣を国民が支持し切れない最大の理由がその体たらくにある。自衛隊の派遣で国民が抱く不
安の根源はイラクにではなく政治の現状、政治家への不信にある。国論は二分しているように見えるが、
その先に見ているものは両方とももっと確たる日本がほしいことで共通していまいか。米国追従でなく、
日本自身にこうしたいという将来像や夢があり、本来そのためにどうするかの論争でなければなるまい。
日本のありようを提示することが真の課題なのだ。
世界が今抱えるリスクの中で自然災害を除き一番大きいのは圧倒的に米国そのものである。米国がと
る政策や事情変更は直ちに世界中に影響する。影響は戦争であったり、飢餓や貧困、環境破壊、株安や
銀行システムの崩壊あるいはテロ勢力の反作用的な拡大であり、それらすべての逆であったりする。大
きすぎる米国の悲劇でもある。客観的にみても、自衛隊派遣も日本としての「アメリカリスク」への対
応で、現実の政権にはほとんど選択の余地のない決定だった。そうした事態からいつの日か抜け出すに
は日本の将来に対する大きな戦略と目標が必要である。自衛隊派遣の選択は基本的には同意せざるを得
まい。対米追従以外に戦略を持たない現状では、行かない選択がもたらすリスクが大きすぎる。しかし
今後、行ってどうするか成果を見る必要がある。理想はそれに続き民間企業が進出し、イラク国内に就
職の機会を拡大、石油輸入や貿易を通しイラク経済復活を助け、中東に平和をもたらすことである。自
衛隊派遣なしに平穏になるのを待ち、そのときに民間が行くという選択は(どこかの政党が主張してい
るが)現下の情勢ではあまりにも身勝手だろう。行って大きな事情変更があり、引き上げる決断をする
事態では、引かなければいけない。その時はアメリカにも過ちを認めろという時でもあるが、果たして
現政権が言えると思えないのが実にじつに情けないが。
国の財政を見れば、社会保障関係費は毎年膨張し続け、二〇〇四年度政府予算案では約十九兆八千億
円、一般会計歳出総額の四分の一に迫ろうとしている。一方では、デフレ不況で、九〇年度に六十一兆
一千億円あった税収は、二〇〇四年度予算案では、四十一兆七千億円に落ち込んだ。しかも、あとわず
か二年後、二〇〇六年をピークに、日本の総人口が減り始める。社会保障制度を支える現役世代の比率
が急速に縮小する。こうした状況への不安感の端的な現れが、国民年金保険料の納付率低下なのだ。こ
このところの理解が、現政権および高級官僚には致命的に抜け落ちている。保険料不払い者は、四割近
くに上る。二十歳代では、すでに半数を超える。この“空洞化”現象が、社会保障制度のかなめとも言
える年金システムの土台を揺るがしている。人生八十年時代と言われるようになってから久しい。百歳
を超える人も珍しくはなくなった。だが、自分の老後を考えるとき、はたして支払った保険料に見合う
年金をもらえるのか。それ以前に、年金制度そのものが、崩壊していると言わざるを得ない。
若者から高齢者まで、国民全体の広く薄い負担による年金制度を構築するしかない。つまりは消費税
率を引き上げ福祉財源に充てる、ということである。確実な財源を示さない限り、国民の将来不安は払
拭できない。ところが、小泉首相が「任期中は消費税を上げない」としているため、政府・与党レベル
では、一向に具体的な議論に進展しない。首相は、世論支持率への影響を気にしているのだろう。いわ
ば首相の大衆迎合的姿勢によって、政策論議に“目詰まり”が生じているのである。
消費税率引き上げは、もう、政治的タブーなどではない。民主党も、先の総選挙では、年金制度を維
持するための消費税率引き上げに言及している。問題になっているのは、「国家百年」のインフラ作り
だ。そのためには、政治生命を賭けても真正面から取り組むのが、一国の最高指導者の責任だろう。
成り行きまかせで国家財政の半分を子孫にツケまわすような無責任な政治家ども、あまつさえ自分ら
の負債を払わせようという子供らに「国を愛する心」を教えてやるなどという思い上がりを堂々と主張
する政治家の先生たちだから、事態は絶望的とも言えるのだが(-""-;) 2004.1.10