でん粉の糊化と老化の話
辞書では「葛粉、漿粉、天花粉などを総称してでん粉という。根と種子にはでん粉が
多い。水に溶けず,放置すれば沈んでしまう。水にまぜて摂氏82度に加熱すると凝固
して糊となる。でん粉は水素、炭素、酸素よりなる」とある。澱粉は葉緑素をもつ植物
が光合成によってつくる多糖類であり、アミロースとアミロペクチンの混合物から成り
立っている。現在世界で生産される澱粉のほとんどはコーンスターチ、小麦でん粉、
馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、タピオカでん粉である。澱粉は原料の種類により異なる
物性を有しているので加工食品の要求特性に応じて使用され、利用方法も種々工夫され
ている。
でん粉の性質
1. 白色の粉末で無味、無臭
2. 水に溶けない
3. 比重は1.6〜1.65 水の中で沈むので '澱粉'という名がついた。
澱粉に熱湯を加えるか、又は水を加えた後に加熱すると ある温度までは粒の形、大き
さ等に全く変化がないが、ある温度を境にして粒は急激に吸水し膨潤を開始すると同時
に粘性の強い液、すなわち糊ができる。この現象を糊化と云い、またこの温度を糊化
温度と云う。
分かりやすく言うと、食品中では生でん粉(β-でん粉)の状態であることが多いが、
加熱調理などの温度変化により構造が変化し粘性が増大し柔らかくなる。この現象を
糊化(α化)という。β-でん粉は分子が規則的に並んだミセル構造となっており水や
酵素がなじみにくい状態。つまり、硬くて消化しにくい状態といえる(炊飯していない
米)。でん粉は、加熱によりミセル構造が壊れることで消化酵素の影響を受けやすく
なり、消化吸収されやすくなる。米は生のまま食べたら下痢する。水を加えて加熱し
ご飯にして食べるのはそのためである。しかし、α-でん粉はいつまでも柔らかい状態
ではなく、時間が経つと再びミセル構造を形成し硬くなってしまう(老化,β化)。老化
したでん粉は粘性を失い消化性も悪くなる。ご飯を放置しておくと硬くなり、食味や
消化性が悪くなるので、暖かいうちに食べましょう(^o^)/ 20180620
ポリフェノールの話
フレンチパラドクスの項でも書いたが、補足的追加。ポリフェノールは多くの植物が
光合成する際に作られる色素や苦み,渋み,アクの成分のことを言う。植物に対して細胞
の生成活性化,分裂を助け、外部からの有害物を無毒化するなどの働きがあるので、
植物自体を守るのに必要な生体防御成分とも言える。植物中のポリフェノールは表皮や
種子に多く含まれている。そのため、たとえば赤ワインには多く含まれていてもブドウ
の果皮を取り除いて作られる白ワインにはあまり含まれていない。人が摂取すると、
主に老化防止や体内の酸化を阻止する作用があると言われている。もともと、人間の
体内にはSODという抗酸化酵素が備わっているが、40歳を境にSODは減少していく傾向
らしいので、年齢と共に意識して摂取すると良いだろう。赤ワイン,緑茶,ごま,大豆,生姜,
カカオ,紫芋,バナナ,マンゴー,ブルーベリー等々様々な食品に含まれている。 必須栄養
素とされていないため基準値は定まっていないが、抗酸化作用が有効とされるのは緑茶
の場合1日に10杯程度。また、ポリフェノールは一度に大量摂取してもその持続効果は
2〜3時間と短かく体内に蓄積されにくいようなので、こまめに多くの食品から摂った方
が効果的p(^^)q 20180428
炭水化物の話
糖質制限食などというが、糖質は炭水化物のこと。さらに言えば、糖質は単糖を構成成
分とする有機化合物の総称である。非常に多様な種類があり天然に存在する有機化合物
の中で量が最も多い。有機栄養素のうち炭水化物、たんぱく質、脂肪は、多くの生物種
で栄養素であり「三大栄養素」とも呼ばれている。まるで講義調だが、地球上で最も多
く存在する有機物は糖質の一つで草に含まれるセルロースである。だからこれを食べれ
ば一挙に食糧問題は解決!するのだが、残念ながらヒトにはこれを消化する酵素セルラ
ーゼがないし美味しくもない。セルロースなどは食物繊維と称され、殆どは植物(細
胞壁)性。ヒトの体内で消化されないという定義もされており、腸内細菌の主食である。
完全に糖質を制限してしまったら、腸内細菌君の餌がなくなってしまう。そうなったら
まともなうんちも出なくなるだろうし、昨今では免疫力の元ともいわれており、何しろ
健康的からほど遠いことになる。腸内細菌やうんちの話はすでに書いたので、そちらを
ご参照下さい(^o^)/ 20180213
フレンチパラドクス
フランス人は、相対的に飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を摂取しているにもかかわら
ず、心臓病(生活習慣病)に罹患することが比較的低いことが観察されたことからフレ
ンチパラドクスと言われている。 赤ワインに含まれているポリフェノール(抗酸化物
質)がアンチエイジングに効くという訳である 。ポリフェノールは複数のフェノー
ル性ヒドロキシ基(OH)を持つ植物成分の総称。ほとんどの植物に含有されその数は
5,000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分で、植物細胞の生
成、活性化などを助ける働きを持つ。給食などで紹介される食品群の中でも、緑黄色野
菜を摂りましょう!と推奨される。物質名が明確ならばサプリメントでと思いがちだが
過去の検証から食品から摂らないと効果は低いようだ。ヒトは雑食性なのだから、やっ
ぱり一日30品目以上食べましょう(^o^)/ 20171226
基礎代謝
何気なく使う言葉だけれども、正確な意味と計算法を知ってますか?基礎代謝というの
は、安静状態でも呼吸、心臓の動き、体温維持などの生命活動を維持するために消費さ
れる必要最小限のエネルギー代謝量のこと。個人差があるが、年齢・性別ごとの標準的
な1日当たりの基礎代謝量は、基礎代謝基準値×体重で算出される。 私の場合だと 63歳
体重66キロなので、基礎代謝量=21.5×66=1419(kcal)となる。つまり、何もせずに寝て
いてもそれだけのカロリー消費がある訳なので、少なくともそれ以上食べないと由々
しき事態となる。終日寝ていることはなかろうから、まあ2000kcalくらいは最低でも必
要かな。ダイエットに励むとしても、ある程度の栄養の知識は必要。ちなみに、筋肉量
を1kg増やせば基礎代謝量が約23kcal増えるという計算になるようだ。もちろん、大ざっ
ぱな計算なので大まかな数値だし個人差・誤差もあるが、筋肉量1kgアップでだいたい
20〜30kcalの基礎代謝量の増加と考えれば良い。簡単に言ってしまえば筋肉量を1kg増せ
ば3〜4gの体脂肪が毎日減っていくという計算になる。筋肉や臓器や脳はかなりの糖質
を必要とする。そもそもダイエットという言葉は、正しく栄養を摂るという意味である。
単に摂取カロリーを減らしたり糖質ダイエットするのは程ほどに! 20171123
バターとマーガリン
バターは牛乳から作られるが、マーガリンがどうやって作られるか知ってますか?牛乳
から作られるバターは当然動物性。一方マーガリンは元は人造バターと言われたことが
あるが植物性油脂から作られる。動物性油脂の食べすぎはNGと多くの人が認識してい
る一方で、植物性の油脂は「不飽和脂肪酸」を多く含むのでコレステロール値を下げる
働きがあり、融点が低いために常温では液体であり体内で凝固することもなく健康的だ
といわれている。加えて、20世紀初頭から行われ始めた「水素添加」という化学処理。
これによって生まれた固体の植物油脂は化学的な組成が安定して非常に使いやすく便利
な商品として登場した。しかもバターよりも安く製造できるので、健康的な植物油だと
いう認識とともにすぐに人気を得ることとなった。現在ではバターに代わる家庭用のマ
ーガリンとしてあるいはファットスプレッドとして広く流通している。マーガリンが化
学的に安定で劣化しくい植物油脂であることの理由は、水素添加という化学処理によっ
て不飽和脂肪酸が「トランス型脂肪酸」に変化したことによる。不安定だった原子構造
が、水素原子の移動(トランス)の結果きれいに整列して安定した構造となり常温でも固
体で酸化しにくくなることで保存性を持つこととなる。しかし水素添加によって生まれ
たトランス脂肪酸は自然界には存在しない。アメリカやヨーロッパではこの天然のトラ
ンス脂肪酸と化学変化によって生まれたトランス脂肪酸を区別して規制している。話が
長くなり若干逸れた。トランス脂肪酸についてはまた改めて記すかもしれないが、日本
での使用量は健康への影響を評価できるレベルを下回っており、欧米での規制は、当面
日本には適用されない。現状は気にする必要はないと思う(^o^)/ 20170925
ステーキはうまい!
油って何?脂は?明確に説明できますか?油脂とは、グリセリンに脂肪酸という物質
が結合したものであり、脂肪酸には飽和と不飽和の二種類がある。などと書くと大方
のヒトは読まないと思うが、油脂の油はさんずいで脂はにくづきである。さんずいは
液体を表しておりにくづきは動物。つまり、油は液状で、脂と書く動物の脂は固体な
のである(魚油は別扱い)。飽和とは化学的に安定で固体であることが多く不飽和は
その逆で不安定で液体であることが多いなどとも書きたいが、その辺りにご興味の方
は自分で調べて頂きたい。そもそも、常温で液体か固体かというのは融点で決まる。
そうあの物質の三態の融点。体温がだいたい37℃なのでそれ以上の融点を持つ牛脂な
どは口の中で溶けない。そうなると口どけが悪く触感は良くない。ゆえにステーキは
熱々で食べた方が良いなど、料理には適切な温度というものが存在する。インスタに
あげるために長々と時間をかけてしまうと、せっかくの美味しい時間帯温度帯を逃し
てしまうかもしれない。魚油やサラダ油のこと、あるいはバターとマーガリンのこと
なども書きたいがまたの機会にしたいと思う。最後にひとつだけ。油の方が大体健康
に良いことが多いが、脂の方がうまいことが多い。健康オタクになるのは個人の自由
だが、たまには焼き肉や血のしたたるステーキを食べたい^◇^; 20170826