茶谷氏との議論のポイント
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1.茶谷氏講話要旨
最近、博覧会ははやらないといわれるが、愛知万博は1500万人を目標にしているように集客力は大きい。私は、パビリオンを作る従来型の博覧会を企画してきたが、パビリオンのない観光キャンペーン「しまなみ海道99」でも、尾道〜今治の人口30万人エリアに様々な仕掛けをして1200万人を動員したことがある。
これは、すでに地域にある資源をゾーンニングすることから始める。次いで、客が歩き回る動線の確保で、自由に歩き回るのもよいが、ガイドが連れて歩くコースを作ることも有効だ。このコースデザインは、ある程度のテーマ性を定め、どの程度の時間で回るかという観点も重要である。こうしたコースを、「我がまちのトリビアを語るガイド」が案内すると、「長崎に行ってこんな人に案内してもらった」ことが、観光客にとってまたとない思い出になる。
また、長崎のまちの文化を知ってもらうため、くんちなどの既存のものや新たな公式ウォーキングなど、イベントを行うことも考えるべき。開会式にお金がなければ。港に泊まっている船に汽笛を鳴らしてもらうことでもよい。幼稚園が運動会を行うとか、商店街が売り出しを行うことも、市民が参加できる立派なイベントである。
こうした行事全体を全国に発信するには、何を訴えたいかというコンセプトを明確にする必要がある。今回は「まち歩き」がテーマなので、「まち歩き歴史都市博覧会」でも良いが、「長崎さるく」のように、地方色のある言葉を使ったほうが印象的だと思う。
発信の手法は、こうしたイベントは個人客中心の集客なので、インターネットのほか、旅行雑誌や新聞・放送などのメディアに無料で取り上げてもらえばコストは安い。また、団体客については、旅行代理店、航空会社などの交通機関などとのタイアップが効果的だ。重点的に発信するエリアとしては、福岡を中心とする九州が最重要で、次いで関西〜中国地方、首都圏といったところ。
2.質疑応答要旨
Q:イベントを一過性のものにしないためにはどうすれば良いか。
A:「南紀熊野体験博」の場合、以前は誰も知らないような場所だったが、これを機会に知名度が上がって地元が自信を持ち、熊野を世界遺産にしようとする動きも出てきた。イベントといっても、木を切ったり炭を焼いたりといったものも多く、開催後も夏休みなどに継続して固定客も付いてきている。「しまなみ海道」は、瀬戸内海を歩いて渡るイベントで、現在もスリーデーウォークやマラソン大会が残り、橋をリュックを背負って歩いている人が多い。
Q:熊野博などは、誰も知らない地域を発信する、いわば創業期のイベントともいえる。長崎の場合は、商売で言えば2代目3代目に入って、その歴史文化はすでに広く知られており、熊野やしまなみと同じような考えが通用するのだろうか。
A:長崎は昔から観光のメッカなので、知っている人が多いが、少し違った角度から見ると魅力が輝きだす。グラバー園を見学すると建物の由来は分かるが、この建物で誰がどういう生活をし、どんな人生を送ったかがわかれば、もっと面白い。
Q:そうした魅力を観光客に伝える効果的な手法はあるのか。
A:長崎に来た人には、それ程難しい問題ではない。ホテルで配布している観光地図にちょっとした説明を書いてもらえればよい。デザイナーが作ったマップにはそうした情報がほとんど盛り込まれないが、コピーライターに依頼すればインパクトにあるものになる。さらに、ガイドが案内して、地元の人しか知らない情報を伝えれば、より楽しくなる。
修学旅行以来、長崎に来ていない人には、シーボルトゾーン、出島ゾーンなどのようにテーマ別に分け、インターネット等で発信していくと魅力が伝わる。
Q: 長崎には、素晴しい先賢達が多いが、全国的にはマイナーなのでメジャーにするため、先賢たちの山車を作って練り歩くイベントを行っているが、いまひとつ盛り上がらない。
A:人というより、その人にまつわるストーリーを訴えることが大切。もっとも、マイナーな人をメジャーにするのは、莫大なエネルギーがかかるので、短期的効果を狙うのであれば、既に有名な人をもっと知らせる方が効果的だ。
Q:長崎は切り口が多すぎて、まとまらない嫌いがある。統一性をどう確保すれば良いか。
A:「今回訴えたい長崎は何だ」と聞かれて答えられるコンセプトが必要。歴史をテーマにするのであれば、全国的に知られた「出島」が分かりやすいのではないか。
Q:長崎の市民はそれぞれの思い入れを持っているので、出島と言われてもぴんとこないが、他県の人にはわかりやすいのか。
A:出島は海外貿易都市である長崎の象徴で、教科書にも出てくるので、日本人で知らない人はいない。グラバーさんも長崎で有名だが、全国的には知らない人のほうが多いだろう。寺町も非常に面白く、捨てがたい存在ではあるが、メインにするには全国的知名度がない。
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