修学旅行における「龍踊体験」の学習効果について
発表者 藤村 美由紀
指導教員 小原 達朗
1,はじめに
学校教育の見直しが進む今日,修学旅行を積極的に学習の機会とする動きが高まっている。故に近年の修学旅行は,行き先や体験の幅が広がり,その形態が多様化してきた。集団活動能力や自習性,実践的な態度の育成や,個性の伸長など,平素とは異なる生活環境で子どもたちが学ぶことは多いと期待される。だが,単に旅行にでかけるだけでは,これらのような学習価値は構築され難い。そこで大事になってくるのが,学びの価値を与えていく意図的な学習計画である。つまり,その体験・学習をすることで,どのような学習効果が望めるのかを把握しておく必要がある。
さらに,現在,まちおこし・地域おこしを通してまちの活性化に取り組もうという気運が高まっている。その取り組みは修学旅行にも目を向けられ,地域特有の文化や産業を体験・見学したり,地域の人々との交流の機会を与える修学旅行の在り方が注目されている。
そこで本研究では,長崎の伝統的な文化の1つである龍踊を修学旅行生が体験するという活動に注目し,その体験によって子どもたちにどのような学習効果が与えられたのかを調査・研究するものとする。
2,体験型観光と長崎市の取り組みについて
情報化社会は人々に様々な情報を容易に与えることができる。しかしながら,それに伴い,リアリティの喪失が懸念されるようになった。実際に体験してこそ得られる思いや学習効果をもっと大切にしなければならない。また,総合的な学習の時間の設置によって,体験学習は更に推進されている。総合的な学習との関連を兼ねた体験学習を修学旅行で実施する学校も多いようだ。このような背景が,体験型観光の修学旅行を後押ししていると言える。
そして,この体験型観光が地域にもたらす影響への期待も大きい。他ではまねのできない地域独自の体験をプログラムすることで,観光客の増加をねらっている。長崎市においても,修学旅行の誘致対策として「長崎広域体験学習協議会」を設置し,長崎の歴史や伝統を活かした平和,食,伝統・文化などの様々なジャンルの計74件の体験活動を行っている。
3,龍踊体験
龍踊は長崎の伝統的な文化の1つである。龍踊体験では,龍踊の演舞を修学旅行生が約3時間で体験する。
4,調査方法
龍踊体験を実施した中学校5校を調査の中心対象とし,体験した生徒,龍踊体験の引率の先生にそれぞれアンケートを実施した。
5,結果と考察
◆調査結果(体験者)
◆調査結果(学校引率者)
項目 |
A中学校 |
F中学校 |
H中学校 |
K中学校 |
Y中学校 |
龍踊体験を知った方法 |
ニュース |
旅行業者 |
FAX |
継続 |
旅行業者 |
龍踊体験を取り上げた理由 |
・教育的価値がある。 ・長崎らしい企画である。 |
・教育的価値がある。 ・長崎らしい企画である。 |
・教育的価値がある。 ・見学とは違う体験である。 |
・指導体制が整っている。 ・長崎らしい企画である。 |
・教育的価値がある。 ・長崎らしい企画である。 |
龍踊体験の企画意図もしくは求められた効果や成果 |
達成感を味あわせられる。また,教師も共に参加し,同じ目線で学べる。 |
様々な体験をさせたかった。 |
伝統芸能における異文化交流ができる。学年全体での達成感。思い出づくり。 |
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長崎の人とのふれあいがもてる。長崎の文化を知ることができる。 |
生徒の変容 |
・変化があった。 他の体験の生徒から羨ましがられ誇らしげだった。充実感が生活態度からみられる。 |
・明確ではない。 |
・変化があった。 協力と個性の大切さがわかり,合唱コンクールに向け,各クラスまとまりだした。学習発表会での再演を希望している。 |
・変化があった。 休みがの生徒の登校日数が増えてきた。 |
・変化があった。 学年のまとまりが増した。クラスの枠を超えたふれあいがうまれた。 |
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