年が明けたばかりでまだまだ寒い中、すでに水仙など
の一部が開花し、そのほかの植物も着々とその準備を始
めているようだ。昨年の阪神大震災の時にも、同じよう
ことをどなたかが書いておられたし、これは万古不変で
ある。植物などの自然は強く、人間は実に弱いと思う。
ハイテクだのインターネットなどと大騒ぎし(自分自身
もその一人ではあるが)如何に大きなビルを建てようと
高架道路を造ろうと、大地を一振るいしただけでいとも
簡単にこれを破壊する力を自然は持っている。しかし、
その直後から何もなかったかのように植物は芽吹いてく
る。そして今、人が人工の暖かさの室内でぬくぬくと過
ごしている冬の真っ只中、春を必死で待っている植物は
強くそしてきれいである。地球はますます狭く便利にな
る一方であり我々はこれを享受しているが、砂上の楼閣
にならぬ努力を怠ってはならないのではないか。地球の
狭さは、食料危機という形でいずれ顕在化してこようし、
今この瞬間にも地球のどこかで愚かな人類の戦争が行わ
れている。日本では、あいも変わらぬ政治の混迷と官僚
の横行、そして悪質になる一方の犯罪が目につく。ホモ
サピエンスは賢いヒトの意、ここでその本当の意味を考
え直す必要があるのではないか。
1996, 1,14 西日本新聞掲載