「登山と身体の科学」実践編

歴史や地形等を頭に描きつつぶらぶらと街をあるいは山を歩くといろいろと見えてくるものがあるような

気がする。元々は健康に良かろうと考えて始めた。歩くほど登るほど面白みを感じる。といったことで、

「長崎の街歩き山歩き」を書き始めて9年になる。最近、登山と身体の科学(山本正嘉)を購入。じっくりと

読み、応用できることを実践しつつ自分なりの解釈を加えてまとめてみた。  20240611〜20240626

 

熱中症対策-3 最終回

登山は軽登山であっても筋肉運動である。だから、必然的に発熱を伴い発生した熱は発散しない限り体内に

とどまり、仮に放散できなければ死が待つことになる。熱中症については何回か書いたけれども、発熱放散

のために、我々の体は大量の発汗を行う。大量の発汗を防止するためには、ペースダウンすること。頻繁に

休憩をとること。十分な給水と塩分補給。体を冷やす目的で冷たい水を飲む。手足を冷やすあるいは扇ぐ。

衣服調整。暑熱順化トレーニングを行っておくなど。 最後に、山本正嘉氏がまとめた後書きから抜粋。

山歩きは運動が苦手な人でも年をとってもできる運動である。人との競争ではなく、自分との切磋琢磨であ

り知的な要素も多い。経験を積むほど楽しめ、山仲間もできる。好きな登山を励行することで、健康や体力

をオールラウンドに増進できるのだから、こんなありがたい話はない。登山は「百薬の長」だといっても過

言ではなく、数ある有酸素運動の中でも、最高峰に位置するものと考えている。と結んでいる。

何回かに分けて、自分の理解と解釈を混ぜつつまとめた。折々に今後の参考にしたい。 20240626

 

山あり谷あり

山は、登ったら下らないといけない。何回か前に、登る際には主に遅筋として持久力に関わる脂肪燃焼、

下りでは速筋で瞬発力に関係する炭水化物燃焼と書いた。ウォーキングは主に遅筋しか使われないのだから

登山は理想的な運動なのは間違いない。ただ一方で、下りは楽ちんだけれど登りがきついなどいう意見もあ

りそうだ。運動エネルギーや位置エネルギーという視点では確かにその通りで登りがきついのは当然だが、

生理学的に言えば、二足歩行のヒトの筋肉や関節は構造的に下りは向いていないし苦手なのである。これ

は四つ足動物にとっても同じで、だからこそヒヨドリ越えという常識を超えた戦術が成立した。それは余談

として、登山中に脚部にかかる負荷は日常生活と比べてとても大きくなる。体の動きによる衝撃も加わる

ので実際はさらに大きな負荷がかかり、下りは登りよりもさらに過大な負担がかかることになる。その結果、

大腿四頭筋が悲鳴を上げて翌日以降に筋肉痛!これを防ぐためには、日ごろから負荷を掛けて慣らしてゆく

ほかはない。さらに、山には多くの木が生えており落ち葉も多い。これが滑る。滑らないようにするために

は四肢を突っ張って体のバランスをとることになり、これがさらに負荷をかけることになる。全ての筋肉運

動の原理は「負荷」にあるのだから負荷がかかるということはそれだけトレーニングになっているというこ

と。下りが楽だという人はたぶん軽登山の場合で、急斜面の落ち葉の多い下りでは立ち往生!になるかもし

れない。私も、下りはあまり好きではないが、山は登ったら下らないといけない。山あり谷あり。楽あれば

苦あり。だからきっと楽しい!のだと思う。     20240624

 

熱中症対策

前々回「水分と栄養補給」で若干記したが、自分の経験を踏まえて、もう少し補足してみる。熱中症という

のは、その名の通り体内に熱がこもってしまうことによって発症する。だから水分補給が必要になる訳だが

体を冷やすことも大変重要。私は、夏になると常にザックにウチワをぶら下げて歩くことにしている。これ

が非常に便利で、暑いときに扇ぐのはもちろんだが、ハエや蚊を追っ払う際にも使う。山中の尾根などで吹

く風が心地よいが、いつも吹いている訳ではないので、自分で扇げば大変涼しく気持ちよい。恐らく熱中症

対策にも十分叶っていると思う。バッテリー内臓のファンを持参すれば扇ぐ必要もなく便利。もう一つ、足

がつった際などに服用するツムラ68のこと。経験上、足がつるのは疲れがたまってくる下山時に多いような

気がしている。そうなったらツムラ68に著効があるが、さらに言えば、何となく体が重いなど体調が必ずし

も良くないなと感じたら、早めの服用を行う。それによって足がつったりすることが減り、熱中症予防等

にも効果があるように思う。  20240620

 

バランス能力を高める

前々回、加齢とともにバランス能力が低下すると記した。バランス能力を維持するためには、体幹を鍛え

ることが必要になり、そのための各種の方法やトレーニングが世にあふれている。しかし、山歩きではこれ

らのかなりの部分を補完する効果があるようだ。登ったり下ったりの山歩きの間では、絶え間なく変化する

登山道の傾斜や路面の状況に応じて足の置き方を様々に変えバランスをとりながら歩くことになる。そのた

め、全身の筋肉を活動させる効果があり、足元が石ころだらけだったりするガレ場の山を歩くことこそが多

数の筋を協調させて動かすこととなり、脳神経系の働きにもよい刺激を与えバランス能力を高めることに繋

がる。つまり、平坦で歩きやすい山道を歩くよりも、むしろごつごつして険しい山道を歩く方がバランス能

力を高める目的に叶うということになる。ただ、そのためにはそれに耐えるだけの基礎体力が必要だし、入

念な準備運動とストレッチが必要。いきなり歩き始めるというのは筋肉などを傷めるので厳に避けたい。堂

々巡りのようだが、栄養や水分摂取あるいは筋肉代謝など、いろいろな面を考えつつ自分の体力では少しキ

ツイか?という山歩きに挑戦したりしつつ何しろ地道に続けることが健康維持と老化防止に繋がるのだろう。

山を歩くのは結構キツイけれども、達成感とか満足感があるのは経験的に間違いない。加えて、その先に健

康維持があるとすれば、なお一層のモチベーションになろうというものである。   20240615

 

水分と栄養補給

梅雨から暑い夏に入ると、熱中症の危険もうなぎのぼり。防ぐ方法として、水分補給は当然として何故熱

中症になるのか?メカニズムを知る必要がある。昔々、運動中に水を飲まない飲ませないという習慣があ

った。私が小学校の頃は、週に一回だったか運動場で校長先生の講話を聞く時間が設けられていた。これ

が実に長く、当時の私は苦手でだいたい保健室に抱え込まれていた。貧血の一言で片づけられていたが、

たぶんあれも一つの熱中症だったのではないかと思う。運動をする時間ではないけれども、夏などに運動

場で必要以上に長く立たせることはNGだろう。山本氏は全く水を飲まない、適宜水をのむ、汗と同量の水

と塩分を摂るグループに分けて実験した。結果は歴然で、全く水を飲まないグループではものの1時間から

2時間で危険な体温域に入り、後者2つのグループに大差はないが5時間超えると塩分摂取しない場合の体温

上昇が著しかった。登山にあてはめても、やはり水の摂取とともに塩分補給は絶対必須である。

三大栄養素は、炭水化物とタンパク質および脂質である。シャリばてあるいは行動食の重要性は、だいた

いにおいて炭水化物補給であることが多い。それと朝食もかなり重要で、朝飯を抜いて山に登るというの

は厳禁。また、炭水化物が最も重要だがタンパク質と脂質も重要性において劣らない。山歩きは必然的に

長時間の運動になるため、炭水化物だけではどうしても不足する。卵やチーズあるいは豆類などを摂るこ

とで、負荷によって傷めた身体組織成分を補修する役割が大変大きい。前夜に十分な睡眠をとり、朝食を

摂って万全な体調で山歩きしないと、痛い目にあう。 20240614

 

筋肉と代謝の話

山を歩く際には、登山なのだから登りはあるとして、登ったら下りもある。登る際には遅筋といって、主

として持久力に関わる脂肪燃焼、下りでは速筋で瞬発力に関係する炭水化物燃焼ということになるようだ。

ウォーキングでは極端に言えば遅筋しか使われない。一日一万歩歩いたとして、それではいかにも偏った

運動と言わざるを得ない。実際、著者の検証ではウォーキンググループと登山グループに分けると、後者

のグループの方が、メタボに属する高血圧,糖尿病,骨粗しょう症。ロコモティブシンドロームで言えば、

膝関節症,腰痛,骨粗しょう症などの生活習慣病に明らかな改善が見られたという。体力測定結果で見ても

脚力や敏捷性において25-30%の改善効果が現れている。ただ、バランス能力の低下は老化に伴うもので

あり、整備され過ぎた登山の効果は限定的と書かれている。これについては別項で詳述してあり、次回に

まとめてみたい。 今回の要約:それぞれの老化程度に応じて登る山を選ぶことにより、バランス能力も

高めることができるため、登山は理想的な運動と捉えることができる。  20240611

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