月下美人開花

 今年は、月下美人が何度も咲く。例年は夏に一度だ

けだが、すでに三回咲き、十月の今も蕾が五個ついて

いる。何回も何回も、それに、月下美人の名の如く、

夜に開花するのは一体どういう目的なのだろう。別に

蛾がくるとか蚊が寄っているでもない。むしろ、あの

強烈な匂いは虫は嫌いだろう。非常に面白い植物であ

る。カマキリは豪雪の年には、雪の届かない高い所に

卵を産みつけるというが、人にはとうてい計り知れな

い、何かがあるのだろう。こういったことは身近にも

多いが、わかっていることは未だに少ない。

 それにしても月下美人の花。極めて魅力的な雰囲気

がある。開花前はまったく匂わないのに、開花と同時

に一気に強烈な甘い香りを発するなど、自然の神秘を

みる思いだ。なんで何回も咲くんだろう。何かを訴え

ているのだろうか。世の中では凶悪な事件や報道が多

いが、良いことの前兆ではなく、悪いことの前触れだ

ったらどうしようか、などとつい思ってしまう。なに

しろ、今は世紀末だから。いや、次の時代は21世紀と

思いたい。そう思わないと元気も出ない。

         10/20長崎新聞「声」欄掲載