だんらんと「もったいない」

 賑やかに誕生した新進党も解党し、野党の政界再編で

始まった新年だが、相変わらず株価は低迷し、景気は一

向に上向かない。また、陰湿なイジメや地球温暖化ある

いはオゾン層破壊から身近なゴミ問題など、今世紀中の

解決はとうてい望めない状況である。ほかにも、巨額の

国家および県の財政赤字などもあり、暗い話題には事欠

かないが、明るい話題に乏しい昨今の情勢である。しか

し、考えてみれば約五十年前、日本は焦土であった。言

い古されたことではあるが、ここまでこれたのはやはり

日本人の教育水準の高さと勤勉さのおかげであろう。な

にしろ識字率の高さは世界にも例を見ないほどであり、

ホ−ムレスと言われる人達で新聞が読めるのは日本くら

いではなかろうか。「二流の国民からは二流の政治家し

か産まれない」と言った政治家がいたが、昨今の投票率

の低さでは、その言葉も説得力をもってしまう。

 政治家の無能を言うのは簡単だが、その政治家を選ん

だのは国民だ。教育に携わる者として、教壇から選挙の

大切さ等も伝えているが、基本は家庭だと思う。高度成

長の遠因には、ちゃぶ台でのだんらんと「もったいない」

という言葉もあったのではないか。先の問題解決のため

にも再認識したいものだ。

1998.1.10 長崎新聞掲載