15cm四方の土台の中には、趣のある伝統的な木造家屋が姿を現します。
窪田勉氏の創る世界は、「手の平に乗るサイズの建築」というのが信条です。その趣向たるや、引き戸や扉はもちろん、家具の引き出しなどの網部に至るまで精密に創られています。縁台の近くや玄関から室内をのぞき込むと、あたかも自分が小さくなって、昔懐かしい日本家屋を訪れているような気分になれます。
京都の太秦撮影所の江戸時代風の髪結い屋や、昭和の雰囲気を味わえる駄菓子屋など、木造家屋にこだわってきましたが、近年で最もよい作品は、この如己堂です。
360度どの方向からでも見ることができるように、本物の建築物と同じように図面を引くところから
始めます。建築関係の仕事を長く務めていたこともあり、扉などの趣向のためにデフォルメを加えていながらも、実際の建物と見まちがうばかりの仕上がりになっています。沓脱石(くつぬぎいし)や手水鉢(ちょうずばち)、トイレの便器に至るまで、実に細やかな配慮がなされています。
また、内部までよく見えるように、彼の作品はすべて屋根を簡単に取り外したり、開閉したりする工夫がなされています。そのため、室内の小物なども自分の思いどおりに配置することができます。 |